飲食店オーナーであれば、料理の原価率には気を使っていると思いますが「そもそも飲食店の適正な原価率はいくらくらいかな?」「原価率をもっと下げる方法はないか?」と疑問に思っていると思います。
原価率の適正値は30%だと言われていますが、そもそもお店の経営は材料費の原価だけで考えるものでもありません。原価率とは利益を出すために損益分岐点を把握する1要素に過ぎませんので、FLR(材料費、人件費、家賃)コスト全体で考えるべきです。
たしかに、FLRコストを60%以下にして、店舗を高収益構造を作り出すために原価率を下げる工夫は大切です。
本日は材料の原価率を下げる工夫について、税理士の私が解説したいと思います。
原価率の前にFLRコストを理解する
まず、原価率の前にFLRコストを理解しましょう。
◆FLRコストの内訳
Food 材料費<==原価率はココ
Labor 人件費
Rent 家賃
FLRコストは60~70%程度にコントロールして、利益を最大化するために必要な指標です。開業したばかりのお店であれば、FLRコストは70%を目指し、さらに高収益店を目指すなら60%以下を目指します。このFLRコストをコントロールする指標として原価率を下げる工夫は非常に大切なのです。
なぜなら人件費や家賃は固定費にあたり、変動費はこの中で材料費のみだからです。
原価率を下げる7つのポイント
ポイント①メニューにメリハリをつける
例えば、居酒屋だからといって、定番のメニューの多くを用意してはいないでしょうか?しかし、メニューの中には、なかなか注文のないものもあり、それらの食材は、賞味期限を過ぎてしまうと廃棄することもあり、これは大きな無駄です。
原価率を下げるためには、メニューを見直して「あまり注文されないもの」は思い切ってメニューから無くてしてしまいましょう。そしてその浮いた材料費を思い切って「おススメメニュー」の材料費に当てて、料理の質をあげてみましょう。
そうすることで、廃棄の可能性の高い無駄な材料費を、料理のクオリティを高めることにつながり、おススメメニューの質が高まれば、新規客が常連客になる可能性が高くなるので非常に有効です。
その分おススメメニューの単価をあげれば、原価率を下げることもできます。むやみやたらに材料費を下げるばかりでは、料理のクオリティが下がり、客足が遠のいてしまいます。
ポイント②材料を使いきる
とにかく材料を使いきることです。飲食店オーナーには「ある程度の廃棄は飲食店ではしかたないことだ」と割り切る方もいますが、それは間違いです。原価率を下げるには仕入れた材料を使いきるように努力しなくてはなりません。
仕入れる材料や量を見直すのも大事ですが、例えば余りそうな食材があれば、お客様に声をかけて、その材料を使ったメニューを提供や「おとうし」として利用したりするなどして、とにかく材料を使いきるようにしましょう。
材料を使いきる意識があれば、日々の仕入れも意識が変わり「これくらいの量であれば材料は余らないだろう」と考える習慣がつくはずです。
ポイント③冷凍食品を活用する
料理の中でも「お肉」などは、クオリティを下げるわけにはいきません。なぜならお肉のクオリティは料理の質に直結するからです。しかし、スープの中の具材や野菜など、材料のクオリティを下げても料理のクオリティに結び付かないメニューもあるはずです。
そういった材料は思い切って冷凍食品を活用してみることです。冷凍食品であれば、ストックができるために廃棄を避けることができます。廃棄を避けることができれば、長い目でみると仕入れ回数にも少なく済むのでトータルで原価率をさげることができます。
味にこだわるオーナーなら冷凍食品ばかり使うのは避けたいことかもしれませんが、原価率を抑えつつ味の質を下げない要素も料理人には求められるスキルですから、常に料理の食材の代替を考え抜くのも飲食店経営には欠かせません。
冷凍食品を使用する場合は、当然ですが冷凍庫のスペースにも気を回す必要があるので、開店前であれば、厨房施設についてもしっかり考えるべきです。
ポイント④ドリンクなどは大量発注して仕入れ値を下げる
原価率を下げることができるものは徹底して大量発注しましょう。例えばアルコールやドリンクなどはディスカウントが効きやすく、酒屋も「1本サービスします!」ということがよくあります。年間を通じると原価率を下げることにつながりますので、
冷凍食品の活用と同様に、ドリンクを大量発注する場合はスペースをとりますので、原価率と同時にお店のストックスペースについても気を回さなくてはいけません。
ポイント⑤業務用スーパーを使う
飲食店だと、専門の卸や市場で仕入れを行うものですが、最近では業務用スーパーも増えており、モノによっては専門の卸や市場よりも安く材料が手に入ることもあります。とくにおススメなものがメトロです。
関東の業務用スーパー:メトロ(METRO)
メトロは飲食業界でも結構安いと評判です。関東に10店舗しかありませんが、もし近くにある方は利用してみてください。
また市場にくらべると業務用スーパーであれば夜7時まで空いている店舗がほとんです。朝早い時間しかやっていない市場と違い、飲食店経営者やスタッフの営業時間を短くすることも可能です。その分経営に集中したいり、体力を温存して体調管理しやすくなります。
また、オンラインでも食材は手に入る時代になりましたので、専門の卸や市場だけでなく仕入先を複数もつのも原価率を下げるコツとなります。
ポイント⑥単価を上げる
原価率を下げる方法は、材料費を低くおさえるだけでなく単価をあげることで原価率を下げることもできます。ただし値上げは客足に響くので計画的に行わなくてはいけません。例えば開業したばかりで、常連客がいない間は、比較的値段を抑えて、常連客が増え、収益が安定したころに値上げをこころみるなどしなくてはいけません。
また、値上げもたびたびすると、お客さんにも悪い印象を与えてしまいますから、何度も行うものではありません。ただし、値上げをする分、サービスや接客をあつくするなど心がけないと、常連客の心も離れてしまいます。
ポイント⑦アルコールの注文を逃さない
アルコールは原価率が低いものの代表ですから、売上の中のアルコール比率が高まれば、全体の原価率も下がってきます。せっかくお客様がアルコールを飲みたいのに、忙しさのあまりに注文を取れない事態は避けなくてはいけません。そのために飲食店スタッフは、常にお客さんの様子を伺い、積極的にアルコールの注文を伺うべきです。
私の知り合いの飲食店ですが、バイトが変わっただけで、アルコールの注文数がずいぶんかわったという話を聞いたことがあります。このようなことは飲食店のサービスでは当たり前ですが、徹底することで原価率も下げることができるのです。
飲食店の原価率を下げる方法のまとめ
結局、原価率を下げるということは、飲食店の経営やサービスそのものであることが多いのです。経営者であれば、材料の値段を抑えつつ料理のクオリティの最大化を図るべきです。
飲食店は競争が激しいために、「美味しい料理」と「接客力」だけでは繁盛店になりません。高収益体制をつくるためにも、原価率を下げる努力を怠ってはいけないのです。